控除は、知っているかどうかで差がつく。
『本当の自由を手に入れる お金の大学』を読み直し、税金が決まる流れを調べたことで、収入と課税所得は同じではないと分かりました。
そこで次に気になったのが、「自分が実際に使う可能性のある所得控除は、どれなのか」ということでした。
所得控除は16種類ありますが、対象になるものは家族構成やその年の支出によって変わります。
この記事では、副業をしていない会社員を想定し、使う可能性の高い所得控除を中心に整理します。
税金が決まる全体の流れは、前の記事でまとめました。
あわせて読みたい:節税は、税金の決まり方を知ることから始まった。
会社員の所得控除は、3つに分けると見えやすい
会社員が使う可能性のある所得控除は、自分で金額を調整できるかで分けると、確認する順番が見えてきます。
| 分類 | 特徴 | 主な控除 |
|---|---|---|
| A | 自分で掛金を調整できる | 小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど) |
| B | 契約や支出で使えるが、控除額の上限は比較的小さい | 生命保険料控除、地震保険料控除 |
| C | 家族構成や支払った費用などの条件で決まる | 基礎控除、社会保険料控除、医療費控除、扶養控除、配偶者控除・配偶者特別控除 |
分類Aは、自分で掛金を決められるため、この記事で最も詳しく扱います。分類Bは契約の必要性が先で、控除のために支出を増やすものではありません。分類Cは、自分で増減させるというより、対象条件に当てはまるかを確認する控除です。
寄附金控除も自分で動かせる控除ですが、ふるさと納税を含めて計算や手続きが異なるため、この記事では位置づけだけを紹介します。
参考:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」(2026年8月27日確認)
控除額が、そのまま税金として戻るわけではない
所得控除について最初に知っておきたいのは、控除額と減る税額は同じではないことです。
所得控除は、税金そのものから直接差し引くのではなく、税率を掛ける前の課税所得を減らします。
所得控除によって減る所得税の概算 = 控除額 × 適用される所得税率
前の記事では、給与収入500万円、所得控除を仮に100万円として、課税所得256万円・所得税率10%になる例を使いました。
ここから所得控除が5万円増え、同じ10%の税率区分に収まると仮定すると、所得税への影響は次のようになります。
5万円 × 10% = 5,000円
所得税が概算5,000円減るという関係です。復興特別所得税と住民税は含めず、税率の境目をまたぐ場合も考慮していません。
一方、住宅ローン控除などの「税額控除」は、計算後の税額から直接差し引く仕組みです。所得控除とは、差し引く段階が違います。
分類A:iDeCoは自分で掛金を調整できる
iDeCoの掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象です。
・対象: iDeCoの個人型年金加入者掛金を支払った場合
・控除額: その年に支払った掛金の全額
現在、企業年金のない会社員が拠出できる上限は月2万3,000円です。上限まで12か月拠出すると、年間の掛金は27万6,000円になります。
前の章と同じく所得税率を10%と仮定すると、所得税への影響は次のようになります。
27万6,000円 × 10% = 2万7,600円
これは所得税だけの概算です。復興特別所得税と住民税は含めず、税率の境目をまたがない前提にしています。また、掛金27万6,000円が利益として戻るのではなく、課税所得から差し引かれることで所得税が概算2万7,600円減るという意味です。
2026年12月から上限が変わる予定
2026年12月1日から、会社員のiDeCo拠出限度額は見直される予定です。
・企業年金がない会社員:iDeCo単独で月6万2,000円まで
・企業年金がある会社員:企業型DCの事業主掛金やDB等の掛金相当額と合わせて月6万2,000円まで
したがって、会社員全員がiDeCoだけで月6万2,000円を拠出できるわけではありません。企業年金がある場合は、勤務先の制度と掛金額を確認する必要があります。
上限が広がっても、上限まで拠出することが自分に合うとは限りません。iDeCoは原則60歳まで資産を引き出せず、選んだ商品によって運用結果も変わります。受取時にも課税関係があるため、目の前の所得控除だけでなく、毎月の家計と老後までの資金計画を合わせて考える制度です。
まず確認したいのは、「自分はいくら控除できるか」よりも、60歳まで使わないお金として、毎月いくらなら無理なく積み立てられるかだと思います。
参考:国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」、厚生労働省「(参考)確定拠出年金制度の現状等」(2026年8月27日確認)
分類B:生命保険料控除と地震保険料控除は上限を見る
保険料に関係する控除は、自分で契約や支払額を選べます。ただし、支払った保険料の全額が所得から差し引かれるとは限りません。
| 控除 | 対象 | 控除額の上限 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払い、対象となる契約の条件を満たす場合 | 平成24年以後の新契約では各区分最高4万円、3区分合計で最高12万円 |
| 地震保険料控除 | 自分や生計を一にする親族が所有する家屋・家財を対象とした、一定の地震保険料を支払った場合 | 支払額が5万円以下なら全額、5万円を超える場合は最高5万円 |
新契約の生命保険料控除では、年間保険料が8万円を超えても各区分の控除額は4万円です。控除額だけを理由に契約を増やすと、減る税金よりも支払う保険料の方が大きくなります。
必要な保障を考え、その結果として対象になる控除を申告する。この順番が自然です。
参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」、国税庁「No.1145 地震保険料控除」(2026年8月27日確認)
分類C:条件で決まる控除は、対象になるか確認する
次の控除は、自分で控除額を増やすというより、その年の所得、家族構成、支払った費用などから対象になるかを確認するものです。
| 控除 | 主な対象条件 | 控除額・上限 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得金額の条件を満たす場合 | 令和7・8年分は合計所得金額に応じて変動 |
| 社会保険料控除 | 自分や生計を一にする親族の社会保険料を自分が支払った場合 | 実際に支払った金額などの全額 |
| 医療費控除 | 自分や生計を一にする配偶者・親族のために、その年に支払った医療費が一定額を超える場合 | 支払った医療費や補てん額などの条件に基づいて計算 |
| 扶養控除 | 所得要件などを満たす16歳以上の扶養親族がいる場合 | 一般38万円、特定63万円、老人48万円、同居老親等58万円 |
| 配偶者控除 | 本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が58万円以下などの要件を満たす場合 | 一般の配偶者は最高38万円 |
| 配偶者特別控除 | 本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下などの要件を満たす場合 | 最高38万円。双方の所得に応じて段階的に減少 |
基礎控除の詳細は、税金が決まる流れを扱った前の記事に譲ります。医療費控除も、保険金などで補てんされた金額が関係するため、ここでは計算式まで扱いません。
扶養控除・配偶者控除については、金額だけを理由に契約を増やすと、減る税金よりも支払う保険料の方が大きくなります。
参考:国税庁「No.1199 基礎控除」、国税庁「No.1130 社会保険料控除」、国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき」、国税庁「No.1180 扶養控除」、国税庁「No.1191 配偶者控除」、国税庁「No.1195 配偶者特別控除」(2026年8月27日確認)
寄附金控除は、ふるさと納税の記事に譲る
寄附金控除は、国や地方公共団体、一定の団体などへ対象となる寄附をした場合に関係する控除です。自分で寄附額を決められる点では分類Aに近い一方、寄附先や所得などによって計算が異なります。
ふるさと納税では所得税の所得控除だけでなく、住民税の税額控除も関係します。そのため、今回の「控除額×所得税率」だけでは全体を説明できません。具体的な限度額には踏み込まず、別の記事に譲ります。
あわせて読みたい:勤務医のふるさと納税は、ワンストップ特例が使えないことが多い
参考:国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき」、国税庁「No.1155 ふるさと納税」(2026年8月27日確認)
控除は、動かせるものと確認するものを分ける
所得控除を16種類すべて暗記する必要はありません。会社員が最初に確認したいのは、次の順番です。
1. 勤務先に企業年金があるかを確認する
2. iDeCoに回しても60歳まで使わないで済む金額を考える
3. 生命保険・地震保険は、必要な契約の中で控除証明書を確認する
4. 家族構成や医療費など、条件で決まる控除に該当するか確認する
5. ふるさと納税は別に上限と申告方法を確認する
控除のために支出を増やすのではなく、必要な制度や支出が先にあり、その結果として使える控除を申告する。iDeCoも、所得控除の大きさだけでなく、家計から無理なく出せる金額を考えることが出発点になります。
次回は、会社員の所得控除から離れ、副業を事業として行う場合の経費や青色申告特別控除、事業所得と雑所得の区分について整理します。
あわせて読みたい:控除の先にも、知っておきたい仕組みがあった。
控除を整理するきっかけになった本
今回、控除の中身を改めて調べるきっかけになったのも『お金の大学』でした。この本自体の感想は、別の記事にまとめています。
Amazonで見る(【改訂版】本当の自由を手に入れる お金の大学)

