家計管理

老後資金の取り崩し方|定額方式と定率方式の違いを調べた

merry

老後までに必要な資産額を計算したあと、僕にはもう1つ分からないことが残りました。

貯めた資産を、実際にはどう使えばいいのか。
毎年同じ金額を取り崩すのか、それとも残っている資産の何%かを取り崩すのか。似ているようで、相場が下がったときの動きはかなり違います。

前回の「老後資金はいくら必要?年金と家計から逆算する手順」では、毎月の不足額から必要資産を逆算しました。今回はその続きとして、老後資金の定額方式と定率方式を調べます。

想定しているのは、老後資金の目標は見えてきたけれど、出口でいくらずつ使えばいいのか決められない人です。

先に結論を書くと、毎年の受取額を安定させたいなら定額方式、資産残高に合わせて取り崩し額を調整したいなら定率方式が考えやすいです。

どちらか一方が正解ではありません。取り崩し率も4%だけに決めず、この記事では2%・3%・4%を並べて考えます。ただし、違いを見るための仮置きで、資産寿命を保証する率ではありません。

取り崩し方は「受取額の安定」と「資産の減りにくさ」のどちらを優先するかで選ぶ

定額方式と定率方式の違いは、シンプルです。

定額方式:最初に決めた金額を、毎年取り崩す
定率方式:その年の資産残高に、決めた率を掛けて取り崩す

定額方式は、入ってくる金額を見通しやすい反面、相場が下がっても同じ金額を使うため、資産の減りが速くなることがあります。

定率方式は、資産が減れば取り崩し額も下がります。資産への負担は調整しやすいものの、生活に使える金額は安定しません。

定額方式では相場下落時に「資産」が多く削られ、定率方式では「受取額」が小さくなる。まずは、この違いを押さえておけば迷いにくくなります。

なお、2〜4%は「安全な範囲」として示すものではありません。率を変えると受取額と必要資産がどれくらい変わるのかを比べるための幅です。

4%ルールは「毎年、残高の4%を使う」という意味ではなかった

取り崩し方を調べると、「4%ルール」という言葉をよく見かけます。

原典の1つが、米国のファイナンシャル・プランナー、William P. Bengen氏が1994年に発表した論文です。米国の株式と国債の過去データを使い、退職時の資産から初年度に一定割合を取り崩したあと、翌年以降はその金額を物価に合わせて調整する方法を検証しています。

つまり、原典の4%は、毎年その時点の残高に4%を掛ける定率方式ではありません。

初年度は退職時資産の4%、2年目以降は前年の金額を物価に合わせて変える、という「購買力をそろえる定額方式」に近い考え方です。

ここが、このルールのキモです。運用せずに3,000万円から毎年120万円を使えば、単純計算では25年で尽きます。Bengen氏は、残りを株式と債券で運用しながら取り崩す前提で検証しました。

株式50%・債券50%で初年度4%、翌年以降を物価に合わせた場合、過去のどの開始年でも33年より前には尽きませんでした。

取り崩しながら残りの資産を運用するから、単純な「100÷4=25年」を超えて資産がもつ可能性がある。これが4%ルールの大事な点です。

もう1つよく引用されるのが、Cooley、Hubbard、Walzの3氏が1998年に発表した研究です。1926〜1995年の米国株式と社債のデータを使い、取り崩し率、株式と債券の割合、取り崩す年数を変えて、資産が最後まで残った割合を調べています。

この研究では、株式50%・債券50%、30年間、初年度4%という条件で、物価調整なしの表では成功率100%でした。一方、毎年の取り崩し額を物価に合わせた表では95%です。

同じ「4%」でも、条件を1つ変えると結果は変わります。

しかも、どちらも米国市場の過去データが前提です。将来の運用成績を予測した研究ではなく、日本で暮らす僕たちに同じ結果を約束するものでもありません。税金や取引コストを含まない検証もあります。

調べてみて、僕は4%を答えとして使うのではなく、取り崩し計画を作る出発点として使うのがよいと考えるようになりました。

定額方式は、毎年使える金額を決めやすい

ここからは、3,000万円の資産から取り崩しを始める架空の例で考えます。これは説明のための数字で、僕自身の資産額ではありません。また、税金、手数料、物価変動は含めません。

最初の資産3,000万円の4%は、年120万円です。月にならすと10万円になります。

定額方式なら、翌年の資産残高が変わっても年120万円を取り崩します。毎月の不足が10万円なら、その不足を埋める金額が一定なので、生活費の計画を立てやすいのが利点です。

一方、相場下落などで資産が2,400万円になっても年120万円を使えば、その年の取り崩し額は残高の5%に相当します。

定額方式は生活費を守りやすい代わりに、下落時は資産側が強く削られます。同じ金額を長く続けられるかは、運用結果と取り崩す期間次第です。

また、年120万円という名目額をずっと固定すれば、物価が上がったときに買えるものは減ります。物価に合わせて増額すれば購買力は保ちやすくなりますが、その分、資産への負担も増えます。

定率方式は、資産残高に合わせて受取額が変わる

同じ3,000万円に4%を掛けると、初年度は定額方式と同じ年120万円です。

その後、資産が2,400万円になった年は、2,400万円×4%で年96万円。月にならすと8万円です。反対に資産が増えれば、取り崩せる金額も増えます。

定率方式では、残高が減ったときに取り崩し額も自動的に小さくなるため、定額方式より資産への負担を抑えやすくなります。

ただし、必要な生活費まで自動的に下がるわけではありません。

定率方式は資産残高に対応しやすい代わりに、受取額の変動を家計で引き受ける方法です。年金やほかの収入で生活費の多くをまかなえる人と、取り崩しへの依存が大きい人では、同じ変動でも重みが違います。

定率なら資産が必ず長持ちするわけでもありません。相場、取り崩す期間、手数料や税金によって、実際に使える金額は変わります。

僕は、率で取り崩す考え方を軸にする

僕は今のところ、その年の資産残高から一定の率で取り崩す考え方を軸にしています。例えば4%で試算することはありますが、4%で固定すれば安心だとは考えていません。2%、3%でも並べて、必要な資産と受取額がどう変わるかを見ます。

老後の生活費は、取り崩しだけで全部まかなう想定ではありません。

資産からの取り崩しと老齢年金を合わせ、それでも足りない分があれば、働ける範囲で外勤やスポットの仕事を入れる。これが今の僕の考えです。

年金の見込み額は人によって違います。年収と加入年数から厚生年金の目安を確認したい場合は、「厚生年金はいくら?年収・加入年数別の目安と上限を調べた」で整理しています。

もちろん、老後も必ず働けるとは限りません。そのため、年金と資産だけならどこまで生活費をまかなえるかも確認したうえで、仕事は不足を調整する選択肢として考えます。

生活費ごとに方式を分けず、毎年一度、資産残高・年金・生活費を確認して、率や働き方を見直すつもりです。僕には、そのほうが続けやすいからです。

完全に働かないか、今と同じ働き方を続けるかの二択ではなく、働く日や時間、仕事量を選べる状態に近づけたい。そのための出口として、取り崩しを考えています。

定額と定率のメリット・デメリット、考えやすい人を比べる

最後に、2つの方式を自分に当てはめるために整理します。

観点定額方式定率方式
メリット毎年の受取額が安定し、生活費を計画しやすい残高が減ると受取額も下がり、資産への負担を調整しやすい
デメリット下落時も同額を使うため、資産の減りが速くなりやすい受取額が変動し、下落時には生活費の不足が広がることがある
考えやすい人毎月の不足額が大きく変わらず、受取額の安定を優先したい人年金などで基本的な生活費をまかない、支出や働き方を調整できる人

判断するときは、架空例のように資産が3,000万円から2,400万円へ減り、受取額も年120万円から96万円へ下がった場面を考えます。

受取額が年24万円減っても生活費を調整できるなら定率方式、難しいなら定額方式のほうが考えやすい。これを判断の目安にします。

ただし、定額方式でも資産が大きく減れば金額を見直せます。定率方式でも、年金や仕事によって不足を補えます。最初に選んだ方法を、一生変えずに続ける必要はありません。

まとめ|目標額、年金、取り崩し方の3段で考える

老後資金は、次の3段に分けると考えやすくなりました。

老後の生活費と年金から、毎月の不足額を出す
不足を埋めるための必要資産を仮置きする
定額か定率か、何%で取り崩すかを考える

取り崩し率による違いを試す式は、次のとおりです。

必要資産 = 年間の不足額 ÷ 取り崩し率

たとえば毎月1万円、年間12万円の不足なら、4%で300万円、3%で400万円、2%で600万円です。率を低く置くほど必要資産は増えますが、資産から毎年取り出す割合は小さくなります。

今日できることは、自分の年間不足額を0.02、0.03、0.04でそれぞれ割り、3つの必要資産額を並べることです。そのうえで、受取額の安定と資産への負担のどちらを優先したいか考えます。

毎月の不足額がまだ分からない場合は、「老後資金はいくら必要?年金と家計から逆算する手順」に戻れば、家計から順番に計算できます。

4%は正解ではなく、計画を始めるための1つの物差しです。定額か定率かも、一生変えられない選択ではありません。

目標額を出し、年金の目安を確認し、取り崩し方を決める。これで、老後資金を「いくら貯めるか」から「どう使うか」までつなげられます。

出典

William P. Bengen「Determining Withdrawal Rates Using Historical Data」Journal of Financial Planning, October 1994(Financial Planning Association「Best of 25 Years」2004年再録版) https://www.financialplanningassociation.org/sites/default/files/2021-04/MAR04%20Determining%20Withdrawal%20Rates%20Using%20Historical%20Data.pdf(2026年9月3日確認)
Philip L. Cooley, Carl M. Hubbard, Daniel T. Walz「Retirement Savings: Choosing a Withdrawal Rate That Is Sustainable」AAII Journal, February 1998, pp.16-21 https://www.aaii.com/files/pdf/6794_retirement-savings-choosing-a-withdrawal-rate-that-is-sustainable.pdf(2026年9月3日確認)

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勤務医
30代、勤務医。 家族との時間と、人生の選択肢を増やしたいと思い、資産形成を始めました。 個別株や信用取引で失敗した経験もあります。 今は、家計管理、インデックス投資、高配当株、不動産投資について、 実際に調べ、試したことを一つずつ記録しています。 成功した方法を教えるブログではありません。 まだ試行錯誤している途中の記録です。
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